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初めて中古車で買ったメルセデスベンツE350ステーションワゴンが忘れられない

初めて買ったメルセデスベンツの車はE350ステーションワゴンだった。 中古車だったが、それでも当時の自分には思いっきり背伸びをした車だった。 何しろ女性に対してカッコつけたいばかりで車を選んでいた頃だ。何が良くて何が悪いかは、モテるかモテないか、その一点にかけていたような時期だった。 まわりでは国産の「モテ車」に乗る友人が増え、あまりにも数車の人気が高かったので、そのうち、右を見ても左を見ても同じ車、なんていうことが現れ始めた時に、「人と同じ車に乗っていたって仕方ない」と思い、必死に貯めた貯金をつぎ込んで買った車だった。 手に入れた瞬間は嬉しさと同時に、思いがけない宝物でも手に入れたような気分だった。 自分ごときが手に入れられるような車だとはずっと思っていなかったので、やればできるんじゃないかと自分に対してもちょっと誇らしい気持ちを感じたりもした。 本当に欲しければ、がむしゃらに頑張って手に入れることもできるんだと実感した人生の最初があの車だったように思う。 まあ若いせいで運転も今より荒かったし、そんな良い車で、大事に乗っているつもりでも軽くこすったり、コンとぶつけたりなんていうことは数年の間にずいぶんあった。 修理もいちいちしなかったので、手放す時には査定がグッと下がってしまったのを覚えている。 そしてしばらくはぶつけても凹ませてもそう気にならない車ばかり選んできたが、少し年を取って再び買い替えを考える時に、しばしばあの車が頭に浮かぶようになって来た。 結局、色々なものに乗って来たけれど、一番忘れられないのはベンツだったのだ。 無理に背伸びしてカッコつけて乗っていた自分を恥ずかしいとも思いながら、懐かしさのほうが遥かに勝ち、今乗ればもっと車の良さを実感出来るんじゃないか、もっと楽しく走れるんじゃないかと思うようになって来ている。 子供の頃に分からなかった良さが大人になって突然理解できることは多いが、もしかしたら車もそういった面があるのかもしれない。 同じ車種にするかどうかはまだ分からないが、改めてベンツを探したい。そう思っている。